月曜日のミッドナイト・ランブル・ショー、ご来場ありがとうございました!毎度恒例のジングルを公開いたしました。
いやー、スワンプ特集とか言いつつ、ディランとかザ・バンドとか、クラプトンの話ばっかりしちゃってすいませんでした…でも、彼らがスワンプ形成に与えた影響ってとっても大きかったと思うんです。イベントでは冗談ばっかりでしたが、ブログではちょっと真面目に振り返ってみます。
今回の話にはいくつかのポイントがあって。
前提:みんなロックン・ロールとレイ・チャールズが好きだった
①西海岸のフィジカルな動き:レオンラッセルのタルサ・コネクション、デラニー&ボニー
②東海岸の研究者的な動き:ディランのエレクトリック化、ビッグピンク地下室での実験→ルーツ音楽とロックの融合
③ブリティッシュ勢への影響;ロックンロールサーカスでのジェシエドデイビス、ビッグピンクがクラプトンやジョージに与えた影響→オール・シングス・マスト・パス
④ジェリー・ウェクスラーの戦略
①と②をつないだのは、レヴォン・ヘルムだったんじゃないかと思います。ザ・バンドが地下室でディランとセッションしていた頃、レヴォンはバンドを離れ、ナッシュビル、ニューオリンズと、地元のミュージシャンとセッションしながら南部を放浪していました。金が無くなったのでメキシコへ行き、造船所で働くのですが、ある日作業中に命の危険に晒されたことにより、仕事をやめアメリカに帰ります。向かった先はLA、ここでレオン・ラッセル、ジェシ・エドとセッションを行っていました。
が、実はレオンとレヴォンはもっともっと昔に出会っていたんです。
14歳のレオン・ラッセル少年、初めてのギグは地元タルサにて。ドサ回り中のロニー・ホーキンスの前座でした。ここで思い出してみましょう、ザ・バンドはデビュー前、「ザ・ホークス」と名乗っておりました。彼らはもともとロニー・ホーキンスのバックバンドだったんですね。ということは、このタルサでのライブでレヴォンとレオンが出会っていた可能性が高いのです(レヴォン以外のメンバーはもう少し後にホークスに加入しています)。
③ではベースメントテープスやビッグピンクがロックシーンに与えた影響を。ベースメントテープスで作られた楽曲は、音楽出版社を通して1967年のロックシーンに産み落とされます。バーズはアルバム「ロデオの恋人」の冒頭とラストで、この時期のディランの楽曲を取り上げています。ベースメントでの経験を通じて大きく成長したザ・バンドは、「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」という傑作を作り上げます。これを聴いたクラプトンは衝撃を受けクリームを解散し、ジョージはアメリカを訪れた際にビッグピンクを数十枚買い占めてイギリスに帰り、周りのミュージシャンに配ったという話(その中にフェアポート・コンヴェンションがいたのかどうかは定かではありませんが)。ルーツとロックの融合が、英米それぞれの形で発生していきます。
イベントでは③の途中で終わってしまい、ジェリー・ウェクスラーの話まで辿りつけず…南部音楽の白人マーケットへのアプローチは、アトランティック・レコードもとい副社長ジェリー・ウェクスラーの戦略が大きいのです。アレサ・フランクリン1968年の代表作「レディ・ソウル」が象徴的…この話はまた改めて…
https://www.youtube.com/watch?v=XQx7sYSA9U8
今回もかなりの数の文献を読み漁ったのですが、判明したのが①〜④のすべてのに、ちょっとずつグラム・パーソンズが関わっているということ。例えばクラプトン。彼とデラニー&ボニーが出会ったのは、ジェリー・ウェクスラーが当時まだローカルスターに過ぎなかったデラニー&ボニーを、ブラインド・フェイスの全米ツアーの前座に大抜擢したからなんですね。で、そのデラニー&ボニーをジェリー・ウェクスラーに紹介したのが、グラム・パーソンズだったという。
グラム・パーソンズはカントリーだけでなく、南部R&Bにも目を向けていたんです(ジョージア州で育ったということも影響しているかも)。事実、フライング・ブリトウ・ブラザーズの1STでは、アラバマを代表するソングライター、ダン・ペンの作品を2曲も取り上げています。単なるカントリーに留まらない、コズミック・アメリカン・ミュージックたる所以がここにあるのではないでしょうか。
さて、次回のミッドナイト・ランブル・ショーのテーマは「ロック・イン・ザ・カントリー」です。前述のグラム・パーソンズを始め、カントリーとロックの融合がどのように試みられ、結実していったのか、数多の名盤とともに確かめて行きます。美味しいカレーも試聴室さんが用意してくれております!ぜひお越しくださいませ〜!
2016年5月27日(金)
谷口雄のミッドナイト・ランブル・ショー#4
「ロック・イン・ザ・カントリー」
出演:谷口雄、吉村類
開場:19:30 / 開演:20:00
■料金:予約 1,500円 (1ドリンク, スナック込)